March 15, 2004

さて、前回からの続き。なぜ今は、トマトケチャップしか残っていないのか。他のケチャップはどうしてしまったのか。

ちょっと話が逸れるが、トマトはもともと南アメリカ原産で、ヨーロッパに伝わった当初は有毒な野菜と考えられていてあくまでも観賞用の植物だった。これが食用の野菜として認められるようになったのは19世紀に入ってからくらいのことらしい。イタリア料理なんて、トマト抜きには考えられないけれど、意外とトマトを使うようになった歴史は新しいみたい(ただし、トマトに対する情熱・執着心は他の国よりも強かったみたいだけど)。

この、ケチャップなるものが欧米に伝わった時期と、トマトが食用になった時期とのタイムラグを考えてみると、じゃあなぜ、その中でトマトのケチャップだけがこうも調味料として定着していったのだろう、という疑問がわく。
それは結局、トマトが食用になってみたら、その味や料理へのバリエーションの豊かさなどのため、食材として広く受け入れられて定着していったからと考えられるんじゃないだろうか。「あ。これ、おいしい」みたいな単純な理由じゃなかろうか。


アメリカでは19世紀頃から、このケチャップが各家庭の重要なソースになっていった。1825年には、主婦向けの料理本にケチャップのレシピが紹介されている。
これがとてつもなく大変な労働らしく、トマトを洗い、湯むきし、刻み、味を調え、かき混ぜながら煮詰める、というプロセスが求められ、かつ当時は冷蔵庫といった保存場所もなく、1年分のケチャップを1度に作らねばならなかったようだ。

そして、1876年にドイツ系アメリカ人ヘンリー・ジョン・ハインツが世界で初めてケチャップの大量生産に踏み切った。この人、あの「ハインツ」というメーカーの創業者ね。今やアメリカでは1、2を争う人気のソース(ちなみに1、2を争ってる相手はサルサらしい。ヒスパニック人口の多いアメリカらしい)となっている。


さて、トマト以外のケチャップだ。
さっきちらり、と出てきた1825年の料理本にはトマト以外のケチャップの作り方も載っているらしい。キャベツ・グーズベリー(すぐり)・きゅうり・マッシュルーム・クルミ…などなど。この時点でこれだけのケチャップがあったのに、今じゃあトマトだけになってしまっているというのは、やっぱり自然淘汰、ってやつでしょうな。トマトが一番おいしくて、いつしかトマトケチャップしか作られなくなった、といったことなんだろう。